どんよっく(@donyokku)です
前回、前々回と2回に渡り「社長」になるための2通りの方法を紹介しました。
手続きや必要なお金が少なく手軽に始めることができる『個人事業』と始めるときの手続きやお金などハードルは高いですが、周りからの信用が高くなり税金対策にもなる『法人』です。
今回はそんな「社長」になれる2通りの方法を比較していこうと思います。
比べるのは『個人事業』と法人の中でも設立割合が高い『株式会社(普通法人)※』です。
※「法人」の中でも一般的に会社を設立するときに属するのが「普通法人」です。
また普通法人の中でも設立の割合が高いのが、幅広く資金を集められ規模を大きくしていきやすい『株式会社』です。
比較
個人事業 | 株式会社(普通法人) | |
対象 | 個人 | 会社 |
責任 | 無限責任 | 有限責任 |
手続き | 税務署などへの簡単な届け出のみ | 法律(会社法)に基づいた登記などの細かい手続きが必要 |
設立費用 | 必要ない | 数十万円(登記などの手続きで必要) |
資本金 | 1円以上 | |
事業内容 | 自由に設定 | 定款に記載した範囲 |
事業の変更 | 定款の変更が必要 | |
経費 | 範囲が狭い | 範囲が広い |
税金 | 利益が増えるほど損 | 利益が増えるほど得 |
決算 | なし | 必要 |
信用 | 低い | 高い |
対象
個人事業は契約をしたり利益を得たりする対象が「個人」となります。事業で得たお金は自由に使えるため、得た利益をすべて自分の収入とすることも可能です。
対して株式会社(法人。※以下「株式会社」と表記)の場合は、契約や利益の対象が「会社(法人)そのもの」となるため、社長であっても会社から給与や報酬を貰う形態となります。
責任
個人事業は対象が個人であるため得た利益を自由に使えますが、損失を出してしまうとその分も全額責任をもって支払う必要があります。
株式会社は対処が会社そのものであるため損失を出してもそれは会社の責任です。社長も含めて個人が自分の財産を放棄してまで損失を被る必要はありません。
例えば会社名義で土地や車などの資産を保有していた場合は、「会社の持ち物」という扱いになるため損失を補填するために処分しなければいけないことがあります。
手続き
個人事業は基本的に税務署に開業届を出し、自治体に事業開始等申告書を出せば始めることが出来ます。
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株式会社を始めとした法人も税務署や自治体に届を出しますが、法律に関わってくることが多いため、記載内容に間違いがないかや認証を受ける必要があったり、証明書の発行する必要があるなど細かく規則が定められており手続きのハードルが高いです。
設立費用
上記[手続き]の際、個人事業は特に手続き費用は必要ありませんが、株式会社は法律(会社法)にも関わる手続きや登録も多く、収入印紙代や手数料、登録費用などで数十万が必要となります。
資本金
事業を始める資本金は個人事業は必要ないですが、株式会社は1円以上※が必要となります。
※以前は1,000万以上ないと法人は設立できませんでしたが2006年に会社法が改正されてからは1円からでも設立可能となりました。
事業内容・事業の変更
個人事業は自分でいつでも自由に事業を決めたり変更できるのに対して、株式会社は会社のルールブックである定款を作成し、それに記載した事業の範囲内でしか事業を行うことは出来ません。株式会社が事業を変更するには定款も作成しなおす必要がありますが、定款は公証役場の認証を受け、法務局にも提出するものであるため手続きが必要です。
しかし、定款は認証を受けた正式な書類のためその内容は法的な効力を持ちます。
経費
事業に関わる支出を「経費」とすることで、負担する税金を減らすことが出来ます。経費にできる範囲は個人事業よりも株式会社の方が広いです。
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- 自宅で仕事(事業)をしていた場合、個人事業は事業に関する面積(仕事部屋のみ)分しか経費にすることが出来ませんが、株式会社であれば家を「社宅」扱いにすることによって家賃の半分以上を経費にすることが出来ます。
- 個人事業はガソリン代や車検代など事業に使う割合分しか経費にすることが出来ませんが、株式会社は事業に必要となれば車代も含め全額を経費に出来ます。
- 個人事業でも交通費を経費にすることは出来ますが、株式会社は交通費に加えて出張手当も経費にすることが出来ます。
…etc
税金
事業の規模が大きくなり利益(収入)が増えるにつれて株式会社の方が税金は有利となります。
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所得に応じて課税される税率は個人事業は最高45%(年収4,000万以上、「所得税」)に対し株式会社は最高23.2%(年収800万以上、「法人税」)と株式会社の方が安く済みます。これに加えて、住民税なども引かれるため個人事業は収入の半分以上が税金で引かれるのに対し株式会社は収入の3分の1程度で済みます※。
※住んでいる地域や会社の規模などによって割合は異なる場合があります。
およそ年収が1,000万円を超えてくる頃から個人事業と株式会社の税金の差がつき始め、株式会社の方がお得になるようです。
決算
株式会社は定期的に経営状況や財政状況をまとめる「決算」を行う必要があります。決算書を作成し、それは株主総会※で認められなければなりません。
※株式会社でいえば「株主総会」のように、決算を発表する場でもある総会を行うことは法律で定められています。
対して個人事業は特に決算を行う必要はありません。
信用
個人差はあるかと思いますが、やはり客観的にみると1人の人間に頼むよりも会社に頼む方が信用しやすく、安心感もあります。
必ずではないですが「信用性」という点においては個人事業よりも株式会社の方が高い傾向があります。
まとめ
『個人事業』は手軽に始められて自分がしたいと思ったことを自分のタイミングで出来るという点において優れてはいますが、収入が増える分税金負担は大きくなります。
対して『株式会社』は手続き費用が必要であったり、定款などの法律に基づいた規則作成という点において設立のハードルは高く、ある程度の縛りがあるため社長であっても個人で自由に事業を動かしづらいですが、その分法的効力や安全性は高く収入が増えるほど税金を抑えることが出来ます。
また、客観的に見た信用性は株式会社の方が高い傾向にあるため事業を大きくしていくためには株式会社(法人)を設立することが効率の良い方法であると言えます。
個人事業も株式会社も双方にメリット・デメリットがあるため理解し、自分に向いている方を選びましょう。
ではまた次回。